国内における24年度承認品目(新医薬品)が、25年3月27日に出揃った。


 そこで今回は、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)との比較も交えつつ、国内で承認された新有効成分含有医薬品(NMEs:new molecular entities)の全体像を紹介する。


 ※以下に紹介する数字等は、規制当局の年度に合わせ、国内は24年4月~25年3月、FDAとEMAは24年1~12月のものとしている。効能・効果、対象疾患のみ承認資料に合わせて“癌”と表記。


■がん領域の新薬が突出


【総品目数は欧州と同レベル】24年度に国内で承認されたNMEsは46品目。FDAの50品目よりは少ないものの、EMAの46品目と同数だった。

 領域別では、がんが19品目(41.3%)で24年の米欧と比較しても多かった。次いで中枢神経系(CNS)、感染症、ワクチンが各4品目(各8.7%)だった〈図〉

 

【モダリティはがん領域の傾向を反映】モダリティ別に見ると、低分子の分子標的薬(低分子MTD)が11品目(23.9%)。次いで中・低分子が9品目(19.6%)。モノクローナル抗体(mAb)6品目、二重特異性モノクローナル抗体(BsMab)4品目、抗体薬物複合体(ADC)3品目を含む13品目(28.2%)が抗体医薬だった。低分子MTD、BsMab、ADCはすべてがん領域の薬剤だった。


 また、核酸医薬としてクアルソディ(一般名トフェルセン/バイオジェン/対象疾患:筋萎縮性側索硬化症)が承認された。


 なお、24年のFDA承認NMEsでは低・中分子が46%を占めているが、その中には、初のエンドセリン受容体拮抗薬Tryvio(一般名アプロシテンタン/Idorsia/対象疾患:成人の治療抵抗性高血圧)や、甲状腺ホルモン受容体β部分作動薬Rezdiffra〔一般名レスメチロム/Madrigal/対象疾患:代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)〕など、画期的新薬が含まれていた(いずれも日本未承認)。


【承認上の措置利用数は少ない】承認審査上の措置を利用したNMEsは以下の12品目。


❶希少疾病用医薬品(オーファン薬):8品目(全体の17.4%)あり、うち4品目はがん領域だった。

2010~19年における希少疾病用医薬品の開発動向を調べた日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所によると、この期間にNMEsに占める割合は、日本では3割、米国では4~6割程度で推移した。

これに対し、24年のFDA承認NMEsではオーファン薬が58.0%と非オーファン薬を上回った。一方、EMA承認NMEsにおける割合は28.3%だった。

❷優先審査:トロデルビ(サシツズマブ ゴビテカン/ギリアド/対象疾患:乳癌)のみだった。

❸迅速審査:タウヴィッド(フロルタウシピル/PDRファーマ/用途:アルツハイマー病の診断補助)、テポックス(テコビリマト/日本バイオテクノファーマ/対象疾患:ワクチニアウイルス合併症)、カビゲイル(シパビバルト/アストラゼネカ/対象疾患:SARS-CoV-2感染症)の3品目だった。


【審査期間は約10ヵ月】審査報告書、医薬品インタビューフォーム、企業のプレスリリースなどから、承認申請から承認までの期間を計算できる44品目については、平均値・中央値ともに10.4ヵ月。オーファン薬8品目は平均値8.0ヵ月、中央値7.8ヵ月だった。


 最も短かったのはカビゲイル(上記迅速審査対象)の5.0ヵ月、長かったのはブルキンザ(ザヌブルチニブ/Bei Gene/対象疾患:慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症、リンパ形質細胞リンパ腫)の15.1ヵ月だった。


【製販企業は外資が6割超】45品目中、内資系企業の製品は15社17品目で、14社が各1品目。武田のみ、フリュザクラ(フルキンチニブ/対象疾患:結腸・直腸癌)、ハイキュービア(皮下注用の人免疫グロブリンおよびボルヒアルロニダーゼ アルファから構成される組合せ製剤/無または低ガンマグロブリン血症)、リブテンシティ〔マリバビル/臓器移植(造血幹細胞移植も含む)における既存の抗サイトメガロウイルス療法に難治性のサイトメガロウイルス感染症〕の3品目が承認された。


 また、ワクチンを除く自社創製品は、タスフィゴ(タスルグラチニブ/エーザイ/対象疾患:胆道癌)、ダトロウェイ(ダトポタマブ デルクステカン/第一三共・札幌医科大学と共同開発/対象疾患:乳癌)のみだった。


 一方、外資系企業の製品は19社29品目。ヤンセンの4品目が最多で、7社(アストラゼネカ、アムジェン、イーライリリー、サノフィ、ファイザー、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、Bei Gene)が各2品目だった。